東京という巨大なシステムが、一瞬だけその「素顔」を見せる瞬間があります。
今回取り上げるのは、ニコンのレンズブランド「NIKKOR」による映像プロジェクトの一編。映像制作集団・WOWが手掛けた「TOKYO DENSE FOG」です。見慣れたはずの東京タワーや新宿のビル群が、深い霧の中で全く異なる文脈をもって浮かび上がります。
NIKKOR Motion Gallery|TOKYO DENSE FOG(youtube/WOW inc. Tokyo)
霧が削ぎ落とす「都市のノイズ」
フィールドワークにおいて、「視界の制限」は通常、情報の欠落を意味します。しかし、本作が映し出すのはその逆の現象です。深い霧は、都市が放つ過剰な情報——看板、色彩、喧騒——を無慈悲に削ぎ落とします。残されるのは、建造物が持つ純粋な造形美と、霧の粒子に反射する光のグラデーションだけです。
霧の向こうで明滅する航空障害灯の「赤」。ビルの窓から漏れ、雲海を染める微かな「光」。
それらは、無機質なコンクリートの集積であるはずの都市が、まるで一つの巨大な生命体として呼吸しているかのような錯覚を抱かせます。
「土地の記憶」を辿る際、僕たちは晴天下の明瞭な姿ばかりを追い求めがちです。しかし、こうした「異相」の中にこそ、普段は見落としてしまう都市の骨格や、自然と人工物の境界線が潜んでいるのかもしれません。
わずか3分余りの旅。見終わった後には、いつもの通勤路や街角の風景さえも、どこか「未知の表情」を秘めた場所に感じられるはずです。
コメント
コメントを投稿